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百田尚樹の『夏の騎士』を読了~


これが筆者の最後の小説だと宣言していたので

『永遠の0』、『海賊とよばれた男』以上の重厚なストーリーと思いきや

語り手の小学六年生の夏の出来事を切り取った

なんともほのぼのとした内容だった。


筆者が小学六年生になりきって書いたんであろうかと思うほど

風景描写、人物描写が緩く感じてしまった。


そして テーマは「勇気」…

もうこれだけでも、読んでる方は気恥ずかしいんだが

クラスで落ちこぼれている仲間と勇気を得るために

読みかじった『アーサー王の物語』に影響を受けて「騎士団」を結成するという掴みには

おいおい、と ツッコんでしまった。


一、騎士は強くあること

二、騎士は正しい行いをすること

三、騎士はどんなときにも仲間を助けること

四、常に勇敢であること

五、騎士はレディを愛し、レディを守ること


主人公のヒロは 実際にあった騎士団の文献を参考に

憲章まで作ってしまった。


気になるレディは、帰国子女でクラスのヒロインを指名し

自らその由を宣言しに行く。


もうね、ここまで来ると読んでいる自分の恥ずかしい過去も暴かれていくような気分になって

読み進むのを躊躇してしまったのは確かだ。


しかし、小説の読みやすさも手伝って どんどんストーリーにはまっていってしまった。

こりゃ、あり得ないだろうと思いながら

クラスカーストの下剋上に 大いに溜飲を下げた。



読み終えたときに、自分の小学六年生のころをきっと思い出す。



俺は、小学生時代も今と同じように調子のいい人間だったんだが、

それが気に入らない輩がいて その主導のもとに いっとき仲間外れにされたことがある。

休み時間に遊ぶ仲間がいない辛さを嫌というほど味わった。

仕方なく、時間を潰すために 図書室の本を片っ端から読み始めた。

それまで気にもしなかったが、図書室には俺と同じような連中がたくさんいたのかも知れない。


『最近、ひとりでいることが多いね。』


クラスの女子にそう言われたときに、かなり馬鹿にされた気分になった。

俺はその疎外感を解決すべく決心した。

俺を仲間外れにした首謀者との対決だ。

そいつは俺よりガタイが小さく成績だってよくなかった。

しかし、火の用心のポスターが表彰されてから 仲間から一目置かれるようになっていたのだ。


ある日、夕食を済ませたあと、そいつが住むある施設へ向かった。

○○ホームと言うその施設は 母親だけの親子が集団生活する施設だった。

外から、子供たちだけで食事をしているのが見えた。

そいつは、小さな子供たちを行ったり来たりしながら世話をしていた。


俺はそのとき、この戦いに、俺は勝ってはいけない気がしたんだよな。



それから、ほどなくしたある日。


『おまえがいないとつまらないよ。』


いつもように図書室に向かう俺を、仲間たちが迎えに来た。

俺に断わる理由はなかった。

そして、その仲間に、そいつはいなかった。




こんな昔のことを思い出したのは久しぶりだ。

この小説せいだ!


俺は、百田尚樹の『夏の騎士』がおもしろかったのだ。



何故、百田尚樹がこの小説を最後の作品にしようとしたのか。

それはきっと、これが小説家の彼にとって 避けて通れない物語だったからだろう。








2019/07/29 15:53 書籍 TB(0) CM(0)
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